年長の知人に、「自分は本をほとんど読まない」という人がいる。彼はずいぶんと博識で、時代の流れを先取りしたアイディアを常に実現し続けているのだが、そのネタは友人・知人たちとの会話から得ていると言う。考えてみれば、何か社会的なアクションを起こそうとしたとき、本を読むというのは実に効率の悪い方法で、他人が考えたり行動したりしたことを一旦言語化したものを長い時間をかけて読解し、自分のものにした上で行動のプランを立て、それを実現するための協力者を広い社会の中で探し求めて、やっと出会ってから交渉したりしなければならない。一方、もし直接誰かからそのネタを仕入れることが出来たなら、コラボレーションの相手は目の前にいるわけだから、すぐその場で提案すればいいわけだ。もちろん、そもそもそういう人的ネットワークを持っていなければどうしようもないわけだが、同じ時間コストをかけて努力するなら、本を読むよりそういうネットワークを構築したほうがよいのではないだろうか、と最近つくづく思うのだ。いや、もちろんそれには様々な制約条件もあり、そんな単純な話ではないこともわかってはいるのだが。


なんというか、体験の連鎖とか、コミュニケーションの連鎖というのは、もしかして情報の連鎖なんかよりずっとパワフルで本質的なのではないかと思うようになってきた。experience chainとかいう言葉ってあるのかな。



幸福論―“共生”の不可能と不可避について (NHKブックス)

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変われる国・日本へ イノベート・ニッポン (アスキー新書)

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