偏在から遍在へ

ある講演会を聴きに行ったが、内容は今ひとつ精彩を欠くものであった。話術の巧みさとか、コンテンツのまとめ方の要領の良さは感じられたが。
その後書店に立ち寄り平積みになっている本を何気なくめくっていると、正に今しがたそのスピーカーから聞いたのと同じ内容が載っていた。
ああ、これが元ネタだったんだ。
いくつかの翻訳本やウェブ上の情報などで新しめのものを手際よく拾って来てうまくまとめ、そのような情報収集の手間をかけない人たちに伝える。そういう商売が成り立つのだ、あいかわらず。
別にそのスピーカーを批判しているわけではなく、社会にはそのような役割を果たす人間も必要だと思う。というよりむしろ、そのような人間がもっともっと増え、彼らへのアクセスが圧倒的に容易になればよいのだ。彼らを専門職として囲いこみ、高いギャラを払いつづけるのではなく、彼らが社会の様々な場所に様々な立場で関わり、彼ら同士のネットワークをうまく利用しながらお互い足りないところを補って行くような、そういう形になれば良い。
知の偏在から遍在へ。
全員が同じ知識を持つ、ということではなく、多種多様な役割を持つ知の担い手たちがゆるやかなネットワークを形成し、そのネットワークの一部を適切に賦活することによって個々の問題に対処する、という形。
そのためのインセンティブを組み込んだわかりやすい「しくみ」を作らなければならない。